学童期・成長期に多い「野球肘」について

学童期・成長期に多い「野球肘」について

去る5月17日、松山市整形外科医会例会にて、「肘関節の投球障害について~保存療法から手術まで~」の講演があり、拝聴してきました。

今回は、講演で述べられた内容を中心に、学童期・成長期に多い「野球肘」についてまとめてみたいと思います。

野球肘とは?

野球肘とは、投球動作の繰り返しによって肘に負担がかかり、痛みや障害を生じるスポーツ障害の総称です。

特に学童期から成長期にかけては、骨や軟骨がまだ未成熟なため、大人とは異なる特徴的な障害がみられます。

成長期の野球肘で多い障害

成長期の野球肘で最も多いのは、肘の内側に起こる「内側障害」です。代表的なものが「上腕骨内上顆剥離骨折」です。

投球時には肘の内側に強い牽引力が加わります。成長期では靭帯そのものよりも骨端線や骨軟骨部のほうが弱いため、成人のような靭帯断裂ではなく、靭帯付着部の骨や成長軟骨が引きはがされる“剥離骨折”として生じるのが特徴です。

一方、肘外側に起こる代表的な障害が「離断性骨軟骨炎」です。これは上腕骨小頭の骨軟骨が傷み、進行すると剥がれてしまう病気です。

放置すると関節内遊離体を形成し、将来的に変形性関節症へ進行する可能性があります。

野球肘の症状

以下のような症状がある場合には注意が必要です。

・投球時、投球後の肘の痛み
・肘を最後まで曲げたり伸ばしたりできない
・肘の違和感や引っかかり感

特に離断性骨軟骨炎は、初期には痛みが軽いこともあり、「投げすぎかな」と見過ごされてしまうことがあります。

内上顆剥離骨折の治療

治療の基本は保存療法です。まず投球を中止し、肘を安静に保つことが重要です。状態によってはギプス固定を行うこともあります。

また、骨癒合促進を目的として、低出力超音波パルス治療(LIPUS)を併用する場合があります。

注意したいのは、「痛みがなくなった=治った」ではないという点です。

骨癒合が不十分なまま投球を再開すると、治癒不全や再発につながる可能性があります。レントゲンなどで骨癒合を確認しながら、段階的な競技復帰を行っています。

十分な治癒が得られない場合には偽関節となることがあります。成長期では投球可能なケースもありますが、高校生以降に痛みが強くなり、将来的に靭帯再建術が必要になることもあります。

離断性骨軟骨炎の治療

離断性骨軟骨炎も、初期段階であれば保存療法が可能です。特に骨端線閉鎖前の初期・分離期前期では、投球禁止を中心とした治療を行います。

しかし、この疾患は治療期間が長くなることが多く、保存療法で改善しないケースでは手術が必要となることがあります。

そのため、早期発見・早期治療が非常に重要です。

早期発見が将来の肘を守ります

成長期の野球肘では、「少し痛いけれど投げられる」という状態が少なくありません。しかし、そのまま無理を続けることで、将来的な肘障害につながる可能性があります。痛みを我慢してプレーを続けるのではなく、早期に適切な診断・治療を受けることが大切です。肘の痛みや違和感がある場合は、お早めにご相談ください。