マダニ介在感染症

マダニ介在感染症

厚生労働省のホームページより

去る令和 6 年 8 月 28 日、令和 6 年度救急蘇生講演会にて「経験するマダニ感染症」についての講演があり、参加してきました。マダニ感染症については新聞報道で知る程度で、それほど詳しい知識は持っていませんでした。普段の診療でこれまで経験したことはないと思われますが、今後当院に来院される可能性があり、興味深く拝聴しました。以下に私なりに講演内容をまとめて記しておきたいと思います。

マダニ介在感染症

マダニ介在感染症は国内で徐々に増加しており、重症例も一定数存在するため、早期診断が重要です。愛媛県で見られるダニ介在感染症には、日本紅斑熱と重症熱性血小板減少症候群(SFTS)があり、いずれも致死的な経過を辿ることがあります。これらの感染症は最近増加傾向にあります。

日本紅斑熱

原因:日本紅斑熱は、マダニを媒介とするリケッチア・ジャポニカ(Rickettsia japonica)による感染症です。

感染状況:日本では年間400~500人が感染しており、増加傾向にあります。特に西日本での報告例が多く、愛媛県での発生が多いとされています。

症状:

  • 発熱
  • 発疹
  • 肝機能障害
  • 血小板減少
  • 潜伏期間:2~8日

    合併症:

  • 脳炎
  • 血球貪食症候群
  • 播種性血管内凝固症候群(DIC)
  • 注意点:マダニに噛まれた記憶がある人は半数以下です。

    治療:テトラサイクリン系抗生剤を1~2週間投与します。

    重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

    原因:SFTSは、マダニを媒介とするSFTSウイルスによる感染症です。

    感染状況:日本では年間70~100人程度が感染し、死亡率は6~21%とされています。

    症状:

  • 発熱期: 発熱、消化器症状、血小板・白血球減少、リンパ節腫脹、炎症反応の軽度上昇が見られます。
  • 臓器不全期: 凝固障害、心筋症、髄膜脳炎、敗血症、血球貪食症候群、アスペルギルス感染症などが起こります。
  • 回復期:症状が徐々に改善
  • 注意点:刺し口がなくても感染を否定できず、動物から人に直接感染した例もあります。接触歴や職業歴の聴取が重要です。

    治療:対症療法しかありません。

    予防と対策:対症療法しかありません。

  • マダニに刺されないようにする: 長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を避ける。
  • マダニが多い地域では注意: 特に草むらや森林など、マダニが生息しやすい場所では注意が必要です。
  • 早期診断と治療:発疹や発熱が見られた場合、早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
  • このように、マダニ介在感染症は早期発見と適切な対策が重要です。気になる症状があれば早めに医療機関を受診してください。