変形性膝関節症の保存療法について
令和7年9月25日、松山市整形外科医会例会にて、愛媛大学医学部附属病院整形外科助教・忽那辰彦氏による「Complex Primary TKA:症例から学ぶ手術戦略とピットフォール」の講演を拝聴しました。講演の中心は人工膝関節置換術(TKA)でしたが、変形性膝関節症の保存療法についても言及がありました。今回は忽那氏の講演内容と「変形性膝関節症診療ガイドライン2023」の内容を踏まえ、保存療法について整理してみたいと思います。
教育プログラム
治療の第一歩は、病気を正しく理解することです。教育プログラムでは、膝関節の構造や病態、日常生活での注意点などを学びます。たとえば、階段や椅子の使い方の工夫、運動療法の重要性、体重管理などが含まれます。これらの知識を得ることで、患者さん自身が治療に積極的に関わることができ、予後にも良い影響を与えるとされています。
運動療法
運動療法には、筋力訓練、有酸素運動、太極拳、ヨガなどの介入があり、痛みの緩和効果が報告されています。当院では、膝関節を支える筋肉の強化を重視しており、特に大腿四頭筋(太ももの前側の筋肉)のトレーニングを指導しています。筋力の維持・向上は、膝関節の安定性を高め、症状の進行を抑えるために重要です。
物理療法
物理療法は、機器を用いて痛みや機能障害を改善する治療法です。診療ガイドラインでは、経皮的電気神経刺激(TENS)や超音波治療が「弱く推奨」されていますが、当院では中周波治療に加え、最近導入したフィジオアクティブおよびフィジオソノを積極的に活用しています。これらの治療は、運動療法の前後に組み合わせることで、より高い効果が期待できます。
薬物療法
保存療法では、痛みのコントロールも重要です。診療ガイドラインでは、以下の薬剤が推奨されています:
- アセトアミノフェン
- NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
- 外用薬(貼付剤・塗布剤)
- ヒアルロン酸・ステロイドの関節内注射
- 弱オピオイド
特に、持病を抱える患者さんには外用薬が「強く推奨」されています。これは、内服薬による胃腸障害や腎機能障害などの副作用が少ないためです。薬物療法は、運動療法や教育プログラムと組み合わせることで、より効果的な治療が可能となります。
まとめ
変形性膝関節症の保存療法は、「教育」「運動」「薬物」「物理療法」の4本柱で構成され、患者の状態に応じて柔軟に組み合わせることが重要です。手術に頼らずとも、適切な保存療法を継続することで、痛みを軽減し、日常生活の質を高めることが可能です。
膝の痛みと向き合うすべての方へ——まずはできることから始めてみませんか?